人生、失敗した者勝ち

 昔、友達と仮面ライダーごっこをしてよく遊んだ。悪の秘密結社・ショッカーが送り出す怪人を次々と倒す正義のヒーロー。当時は深く考えなかったが、そのモチーフはバッタだった。
◆そんなバッタの天敵にならんとする日本人がいる。『バッタを倒すぜアフリカで』(光文社新書)を著した前野ウルド浩太郎氏だ。著書には『ファーブル昆虫記』と出合って昆虫学者に憧れ、バッタの研究成果を論文発表するまでの半生がつづられている。
◆氏は、サハラ砂漠などに生息するサバクトビバッタの繁殖行動を調査。雄と雌がいかにして出会い、結ばれ、産卵しているのか、その一連のプロセスを明らかにした。めざすのは深刻な農業被害をもたらすバッタ大発生の謎を解くことだ。
◆研究を続ける上で、氏の生きる原動力となったのが数々のつらい体験だったという。褒められることよりバカにされることが多い日々。意地でも負けられないとの思いが、大変な状況でこそ力強い支えとなった。
◆ここ一番、絶対に成功したい時が人生にはある。その時を迎えるまで失敗を重ねた分だけ、成功に役立つ知恵と、逆境に耐える力が蓄えられていく。氏は思う。「だから人生、失敗した者勝ちだ」と。(佳)

 2024.5.8付 公明新聞 北斗七星