欧州で「日本のバラ」と呼ばれ人気

サザンカ
 寒い冬に直径が6~8cmの白や赤の美しい花を咲かせる木がサザンカです。この植物は、ウメ、ロウバイスイセンとともに、雪の中でも花を咲かせる「雪中の四友」と呼ばれ、私たちの身近で庭木や生け垣として親しまれてきました。
 子どもには童謡の「たき火」で、「さざんか さざんか さいたみち」と、口ずさまれます。大人には、どんよりとした冬空を背景に、不倫愛の切ない心を象徴する花として、1980年代のヒット曲「さざんかの宿」で歌われました。
 真冬の寒さの中で花が咲いても花粉を運ぶハチやチョウがいないので、タネを含む果実がなるのかと心配になりますが、夏には果実ができます。サザンカは、メジロヒヨドリなどの鳥に花粉の移動を託す植物なのです。
 植物には、日本で呼ばれる「和名」のほかに、国際的に通じる「学名」という名前があります。この植物の学名は「カメリア サザンカ」です。「カメリア」は、ツバキの仲間であることを示し、「サザンカ」は和名です。
 和名が学名にそのまま使われるのは珍しいですが、この植物の原産地は日本であり、江戸時代、長崎の出島に来ていたスウェーデンの医師ツュンベリーにより、ヨーロッパへ紹介されたからです。そのため、英語名も和名と同じ「サザン力」で、ヨーロッパでは「日本のバラ」とも呼ばれ人気があります。
 この植物の花は、ツバキの花とよく似ていますが、花びらの落ち方が違います。「サザンカの花は、花びらが一枚ずつバラバラになって散る」といわれるのに対し、「ツバキの花は、花ごとポロリと落ちる」といわれます。
 このような違いがあるのですが、花の咲く時期がサザンカは12月から2月で、ツバキは2月ごろからです。そのため、花びらの落ち方で識別する機会は、それほど多くはありません。 甲南大学特別客員教授 田中 修

 2024.2.17付 公明新聞 花と緑の豆知識 11
 こんな記事もあったのですね。