凡人とは

 デンマークの哲学者キルケゴールは、著作『現代の批判』の中で“情熱のない時代は、ねたみが、傑出する人の足を引っ張り、人々を否定的に水平化する”と述べ、それを打破するには一人一人が「不動の宗教性を獲得するしかない」(桝田啓三郎訳)と強調した。
▼この思想が世界で注目されたのは、彼が42歳の若さで世を去ってから半世紀も後だった。なぜ、これほど深く時代を洞察できたのか――。池田先生は語った。「彼が自分の寿命が短いことを自覚し、その短い生涯のうちに、なすべきことをなそうと戦ったからです」
▼先生自身もまた、1日を1カ月分にも充実させる思いで戦った。いつ倒れても、今日死んでも悔いはないとの覚悟で生き抜いた。それは恩師が描く広布の構想を実現し、弟子の模範を後世永遠に残すためであった▼誰もが今世の命には限りがある。だからこそ「今」を全力で生きる意味や価値を自覚できる。先生は論じた。「『英雄』とは、『自分にできることを、すべてやった人間』であります。凡人とは、自分にできないことを夢見ながら、自分にできることをやろうとしない人間であります」と
▼自身が定めた広布の使命を、時を逃さず果たしゆく。その人こそ、真の英雄である。(白)

 2024.2.14付 聖教新聞 名字の言

 「賢人は安きに居て危きを歎き佞人は危きに居て安きを歎く」
    富木殿御書(止暇断眠御書) 御書全集P969