アリの一穴

◆「スパゲッティーの上で虫が動いているのに気づいた」。どうする?
◆『「壊れ窓理論」の経営学』(マイケル・レヴィン著/佐藤桂訳=光文社)の著者はいう。客が皿を取り換えさせたとしてもそのレストランに「再び足を運ぶだろうか?」。ドーナツ店でゴキブリを目にしたら? 客は「そのチェーンのどの店鋪にも足が向かなくなるだろう」
◆「社会心理学者や警察官に言わせれば、壊れた一枚の窓が放置されていたら、残りの窓もじきに壊れる」。本書は犯罪学者のウィルソン&ケリングによる、この壊れ窓理論を通じて、「一事が万事」「小事が大事」「アリの一穴」の危機管理を提唱する 。
◆この理論の実践で効果をあげたのは、1994年に市長に選出されたジュリアーニニューヨーク市長だ。地下鉄の落書き、チップの強要、無賃乗車などの犯罪も容赦なく罰するシグナルを市長と警察本部長が発信した結果、年間2200件以上の殺人件数が1000件を切った。
◆一事に万事を集約した人として同著は、伝説の大リーガー、ジョー・ディマジオを挙げる。彼は「いつでも力の限り、最高のプレーをした。なぜなら、スタンドには彼をはじめて観る客がいるにちがいない」から

◆「チャンスは二度ない」「全員が会社(組織)を代表する大使」。危機管理の一環としてこんな忠告も傾聴に値する。(芙)
【6月7日付 公明新聞 北斗七星】