やる気を高める「目標設定」

スポーツ心理学の観点から
大舞台で実力を発揮する7

 前回まで、メンタルトレーニングで実施する心理的スキルの紹介をしました。今回は、私たちがスポーツ選手のやる気を高める目的の心理的スキルである「目標設定」を具体的に紹介します。この目標設定は、受験生やビジネスマンにも十分活用できるものですから、ぜひ試してください。
 ここでは、目分の夢ややりたいことを目標として決めることです。また自分の人生や、やりたいことをイメージトレーニングとして実施します。紙面の関係上すべてを紹介することはできませんので、一部を簡単に紹介します。
 次の目標を紙に書いてみましょう。
 1.人生における夢、50年後の目標、30年後の目標、10年後、5年後、3年後、1年後、半年後、今月、今週、今日の目標を順番に書いてください。
 2.次に、あなたが今やっている「スポーツ・仕事・趣味など」の夢、50年後の目標、30年後の目標、10年後、5年後、3年後、2年後、1年後、半年後、今月、今週、今日、今の目標を順番に書いてください。たぶん、多くの人が「結果目標」を書くと思います。
 3.今度は、その結果目標を見ながら「プロセス目標」(その結果を達成するためのプラン)を書いてみましょう。例えば、入生の夢が「金持ちになりたい」としたら、「いくらぐらいの金持ち」「いつまでに」「どうやってその金額をもうけるのか」「それが現実的か非現実的か」を書いてください。

 どうでしたか?スムーズに書けましたか?たぶん、多くの人は、自分がいかにいい加減かに気づき、このままでは"やばい"と考えたと思います。この「気づき」がチャンスです。「このままではだめだ。明確な目標を立て、それを実行しよう」という気持ちになったとしたら、この目標設定は成功です。
 スポーツで言えば、一流選手ほど早く明確に書けますが、三流選手は書けない、考えないと書けない、時間がかかる傾向があります。つまり、一流選手は、このようなことは明確に頭の中にあり、何を自分がすべきか理解しているために、やるべきことの優先順位が決まっでいるので、迷いや悩みがなく行動できるのです。
 例えば、自分の夢が「オリンピックの金メダル獲得」ならば、何年後のオリンピックで金メダルを取るのかを決め、その1年前までには世界選手権で上位(メダル)、2年前までには日本代表・日本チャンピオン、3年前までには日本で上位、4年前までには高校チャンピオンでジュニア日本代表、今年中に全国高校総体(インターハイ)上位入賞など、夢を達成させるために、やるべきことが見えてくるはずです。
 このように段階的に目標やプランを立てていき、モチベーション(やる気)を高めるのが「目標設定」という心理的スキルです。 
高妻 容一(東海大学体育学部教授)

【12月27日付 聖教新聞