話題豊かな自伝的幸福論

『きっと幸せの朝がくる』 古川智映子著

 「幸福とは負けないこと」(副題)──この人生の要諦を、著者は何度も言い換えて繰り返す。「幸福とはぬるま湯につかったような平穏な日々を重ねることではなく、全力で不幸に立ち向かい克服して獲得するもの」「深く悩み、苦しんだ人ほど、真の幸福を手にすることができる」と。
 優しい語り調子がすっと胸に入ってくる。藤沢周平との交流から衣食住のつつましい様子まで豊富なエピソードで読ませる。「苦労が逆に心の垢になってしまう人もいる」「悩みに振り回されなくなると、運はついてくる」といった論点にも目を開かせる。“もうだめだ”と諦める前に手にしたい一書。(三)
講談社 ・ 1,188円

2016.11.26付 聖教新聞 読書より抜粋