報恩感謝の一念

 子宮がんと診断された婦人。不安で心が張り裂けそうな中、娘から手紙が。
▼「お母さん大好きです。私のために働いてくれてありがとう。私はお母さんを守ります。お母さん死なないでください。お願いします。私を産んでくれてありがとう」
▼弱気な心に衝撃が走った。娘はダウン症。重度の障害があった。今まで母娘で乗り越えてきた幾多の苦闘が思い返された。“そうだ。この子のために、私は絶対に生き抜く”。懸命に祈った。手術は成功し、元気な体に。
たった一言の言葉でもいい。感謝の思いを言葉や行動で表していく。それが、相手の心を揺り動かす。「ささいなことでも娘は『ありがとう』と。周囲の雰囲気も温かくなりました。娘が教えてくれた感謝の心は、私の人生の宝です」と婦人。
松下幸之助氏は、池田名誉会長との往復書簡集『人生問答』で述べている。「心の豊かさというものはいろいろあるが、やはり恩を知るということが一番心を豊かにするものではないか」と。
▼仏法では知恩・報恩を説く。感謝の心が光る人は、生き生きと輝いている。周囲をも明るくする。自分を支え育んでくれる、すべてのものへの「報恩感謝」の一念をもち、人生を美しく、豊かなものにしていきたい。(芯)