大誠実で!

 その少年は、汚れたボールを手に、立ち続けていた。昭和20年代後半の後楽園球場。公式戦を終えて出てくるジャイアンツの選手にサインを求めたが皆、通り過ぎていった。
▼最後の一人だけが優しくボールを受け取り、ペンを走らせてくれた。与那嶺要選手。本場アメリカ仕込みの猛スライディングで観衆をわかせ、“史上最高の1番打者”と謳われた往年の名選手だ。
▼半世紀以上を経て、与那嶺氏が語っていた。「どんな人にも、差別なく誠実を尽くすものですね」。あの時の少年こそ、後に“世界のホームラン王”となる王貞治だった。その王選手もまた、“あの時”の喜びを忘れず、サインの要望には真心で応じる姿勢を貫いてきた。
▼「誠実。それは、いっさいの根本」(上田和夫訳)とはイギリスの歴史家カーライルの至言。誠実は宝である。人に誠実に接した分、果報となってわが人生を輝かせる。また、誠実は武器である。人生の勝利の道を切り開ける。
▼「裏表をつくらず、真っすぐに、大誠実で進むのだ」と名誉会長。だれに対しても真っすぐに! 目の前の一人に大誠実で! これが学会の伝統だ。
▼いよいよ決戦の夏! 今こそ、誠実にして大胆な「一対一の対話」で、大いに友好の輪を広げよう。(誠)