なぜ、実力を発揮できないのか?

 今回で4回目になっておりますが 、聖教新聞の文化面におもしろい記事がありますのでUPいたします。


スポーツ心理学の観点から
大舞台で実力を発揮する 4

 スポーツの選手やコーチのみなさんは、「うちのチームのほうが強いのになぜ負けたのか?」「あんなチームにどうして負けたのだろうか?」「どうして実カを発揮できないのだろうか?」「せっかく、技術や体力もついたのに、大切な試合であがって負けた」などの経験はありませんか。
 毎日の練習で「技・体」の面の強化はできて、うまくなったし強くなった、しかし大事な試合であがって(プレッシャー)負けたなど、メンタル面の理由で負けたということは、心・技・体の「心」が弱いから負けたということに気づきましたか。
 一般的には、チームや選手が「弱いとか強い」という場合に、ほとんどの人々が「技・体」の面を見て、弱い・強いと決めつけているように感じます。しかし、誰が見ても負けるはずのないチームや選手に負けることは、スポーツの世界では当たり前のように起こります、優勝候補が勝てない、弱いといわれたチームが奇跡の勝利を勝ち取ることはよく耳にすることです。
 そのようなことが起こった後の選手のコメントには、「調子が悪かった」「気持ちが足りませんでした」「精神力が原因です、どうして負けたかわかりません」「撲らのほうが強いんですが、試合では負けました」などと、「言い訳」のコメントが聞こえてきます。
 しかし、試合で負けたということは「弱かった」のです。ただどこが弱かったのかを突き詰めると、「心(メンタル面)」が弱かったことに気づくはずです。つまり、強いとは「心・技・体」すべてのバランスがあってこそ強いのであり、このバランスが取れていなくて試合で負ける場合は、やはり「弱い」のです。
 この弱さを克服するには、練習するしかありません。しかし、「技・体」の練習だけをしても、練習の量を増やしても、また同じことの繰り返しです。そこで、「心」の練習や準備、つまりメンタル面強化のトレーニングをすることが、強いチームや選手になる大切な準備になります。
 ここで受験生が入試で失敗したとしたら、何が原因でしょうか?もちろん、勉強不足(練習不足)もあるでしょう。しかし、しっかりと勉強したのに失敗するとしたら、緊張などのプレッシャーで集中できなかった、頭が真っ白になった、原因不明の下痢や腹痛があった、まわりの人が頭よさそうに見え自信がなくなったなども考えられませんか?
 これは、まさに「心(メンタル面)」の問題であり、大舞台で力を発揮することに対して、何かが邪魔をしたのです。その邪魔をした何かが、見えない重圧、不安・心配、見えないかなしばりなどといわれるプレッシャーでもあるのです。
 そこで、この実力発揮の邪魔をするプレッシャーなどの心理的問題に対処(準備・強化・トレーニング)をする方法が、「メンタルトレーニング」というものです。次回からは、具体的なメンタルトレーニングを紹介していくことにします。
高妻 容一(東海大学体育学部教授)

【12月6日付 聖教新聞