女性の連帯こそ人類の希望

 世界との語らい(DIALOGUES WITH WORLD CITIZENS)
 第30回 世界子ども慈愛センター ベティ・ウィリアムズ会長

 「一念」で決まる 一念の決意が人生を変える。
 「一人」で決まる 一人の行動が歴史を変える。
 この「勝利の方程式」を世界に証明した女性が、「世界子ども慈愛センター」のベティ・ウィリアムズ会長である。
 2年前の秋、錦繍に包まれた八王子市の東京牧口記念会館で、妻と共にお迎えした。
 わが創価の女性の「平和の文化」のスクラムを、熱く見つめ、讃えておられる。
 婦人部・女子部の友と微笑みながら、語り合われた。
 「私は女性が世界を変えると、心の底から信じています。その動きは、すでに始まっているのです」

 悲劇はたくさんだ

 それは、1976年(昭和51年)の8月10日。惨劇は、彼女の目の前で起きた。
 突然の銃声。北アイルランドの中心地・ベルファストの市街地で、銃撃戦が始まった。
 その時、ウィリアムズ会長が愛娘を乗せて運転する車は、テロリストの車とすれ違った。間一髪であった。
 警官の発砲を受けて、テロリストの車は暴走した。あろうことか、道端を歩いていた母子連れに突っ込み、天使のような3人の幼子の命が瞬時に奪われてしまったのだ。
 領土や宗教をめぐる北アイルランドの紛争は、遠く11世紀にまで遡る。根深い対立は、20世紀に入って激化し、テロ行為の応酬を招いた。7年で、実に1700人もの人命が犠牲になっていたのだ。
 多くの母が、事態の打開を望んでいた。祈り続けていた。
 しかし、あまりに長き紛争の歴史と、凶暴な武力の前に、皆、沈黙するしかなかった。
 そのなかで、ウィリアムズ会長は、一人、声を上げた。「もう、黙っていられない。こんな悲劇はたくさんだ
 痛ましい事件の衝撃から、彼女を立ち上がらせたのは「正義の怒り」であった。
 「暴力によって子どもが死ぬことは、あらゆる暴力の中でも最悪のものです」
 この時、彼女は33歳。2児の若き母であった。

 「一は万が母」

 「これに署名して下さい
 単身、紛争地帯に乗り込み、女性たちに戦闘の中止を真剣に訴えた。
 行動だ。動くことだ。電光石火のスピードで勝負だ。恐れていては何も生まれない。学会も、協議しながら動き、動きながら協議する。この阿吽の呼吸で勝ってきたのだ。
 彼女は、対立する「双方の陣営」の家へ足を運び、勇敢に扉をノックしていった。
 誰が味方に変わるか、わからない。自らの先入観こそが、最大の壁である。
 「テロの魔の手から幼子を守ろう
 「過去は変えられなくとも、未来は変えられる
 この「平和への嘆願署名」は、瞬く間に広がった。
 一人の心に灯された勇気の炎は、燎原の火の如く燃え伝わった。
 恐怖は伝染する。だが勇気も伝染する。
 これが、会長の信念だ。
 ゆえに、まず「一人」 一人の味方をつくることだ。
 ピラミッドも、頂上からは建てられない。一つ、また一つ堅固な土台を積み重ねていって、初めて頂点に達する。
 勝利の金字塔も同じである。まず、零から一を生む。これが勝負の急所だ。「一は万が母」なのである。
  ―― 略 ――
 「『自分には無理だ』と思うことがあるかもしれません。しかし、それは思いちがいです。私たちひとりひとりが世界を変える能力を持っています」
  ―― 略 ――

 勇気を持つこと

 道なき道を切り開いたがゆえに、命も狙われた。車に爆弾を仕掛けられたこともある。
 ノーベル平和賞の賞金を妬んだ卑劣な噂も流された。
 「家庭を犠牲にして平和運動する者に、母を名乗る資格があるのか」とまで言われた。
 母は微動だにしなかった。
 「気楽な生活に戻りたいと思っても、残念ながら、ひとたび平和にかかわる生活を始めたならば、もう後戻りなどできない。私の人生は平和と正義に捧げたのです」
 当時、お子さんたちも留守番などで寂しい思いをした。しかし今、この母の献身は、一家の誉れの宝と輝いている。
 ”無学な女性たちの運動”などと揶揄する者もいた。
 だが、そうした傲慢な挑発にも、はるかに聡明な言葉で応戦し、皆を感嘆させた。そして、なお一層、大きく共感を広げていったのだ。
 「私たちは、誰に何と言われ、何と思われようとも、運動の目的が達成できれば、それでいいのです」
 平和とは勝ち取るものだ。悲嘆や感傷を制覇し、迫害を勝ち越えながら、断固として前へ前へ進みゆく闘争だ。
 「不屈の行動の支えは」との問いに笑顔で答えてくれた。
 「自分の中にある確信について、『勇気を持つ』ことが重要です。何事も続けなければならない。誰が何と言おうと、あきらめてはならない」
 「『それは無理だ』と言われると、『やってみせる』と思うのがアイルランドの女性なのです」
  ―― 略 ――
【9月14日付 聖教新聞 1面】

 名も無き庶民の創価の婦人部の戦いそのままではないでしょうか。
 婦人部の皆様に感謝、そして、最敬礼いたします。