第34回「SGIの日」記念提言 13-10

◇「人道的競争へ 新たな潮流」-VOl.10

「米ロ首脳会談」開催し 核軍縮への行動開始を

NPT第6条の誠実な履行を
 続いて第三の柱として、核兵器廃絶への挑戦を通して「平和の共有」を図るための枠組みづくりについて提案したいと思います。
 まず核兵器の削減に向けて、世界の核兵器の95%を保有する米ロ両国が、軍縮交渉を直ちに開始すべきだと訴えたい。
 核問題を論じる上で忘れてはならないのは、NPT(核拡散防止条約)が保有国に対し、その地位を永遠に認めたわけではないという点です。
 この点、国際司法裁判所が96年に核使用に関する勧告的意見〈注6〉を出した際に裁判長を務めたモハメド・ペジャウイ氏が、昨年、誠実な核軍縮交渉を求めた第6条の意義について述べた言葉には千鈞の重みがあります(ピースデポ「核兵器・核実験モニター」第307-8号)。
 「<誠実さ>こそ国際法の根本をなす原則であり、これがなければ全ての国際法は破綻してしまうだろう」
 「<誠実さ>は、それぞれの加盟国が、個別的に、または加盟国以外の国家も含めた他の国家との協力の下に、核軍縮というNPTの目的に向けて国際社会が少しでも近づけるよう積極的な措置をとることを要求している」 
 つまり、NPTへの信頼性は、保有国の誠実な行動があってこそ成り立つもので、その重要性に鑑みれば、軍縮交渉が正当な理由もなく行われていない状態は、<誠実さ>に根本から矛盾することになる、と。
 こうした中、ヘンリー・キッシンジャー博士らアメリカの元政府高官4人が「核兵器のない世界」を求めるアピールを2年連続で発表して以来、保有国を巻き込む形で議論が活発化してきたことが注目されます。
 昨年、アメリカのオバマ大統領は選挙期間中の段階で、「弾道ミサイルの一触即発警戒態勢を解除するためにロシアと協働し、両国の核兵器と核物質の備蓄を劇的に削減する」との立場を表明しました。
 一方のロシアも、メドページェフ大統領が「START1(第1次戦略兵器削減条約)に代わる核軍縮に関する新たな条約を作ることが重要」と述べるとともに、プーチン首相も「我々は"パンドラの箱"を閉じなければならない」との見解を示しています。
 この機運を逃すことなく、「米ロ首脳会談」を一日も早く開催することを呼びかけたい。そこで、大胆な核軍縮に向けての基本合意を行い、2010年のNPT再検討会議に向けて、両国が誠実に軍縮に臨む姿勢を世界に明確に示すべきだと思うのです。
 具体的には、年末に期限が切れるSTART1の削減規模をはるかに上回る――2000年にロシアがアメリカに提案した、両国の核弾頭を1000発にまで削減する案を視野に入れた――新たな核軍縮条約を米ロ間で締結することが求められましょう。
 このほか、CTBT(包括的核実験禁止条約)へのアメリカの批准や、カットオフ(兵器用核分裂性物質生産禁止)条約の交渉など、長年の懸案に対しても即座に行動を開始すべきであります。
 その上で両国の合意を土台に、他の保有国の首脳にも参カロを呼びかけ、国連事務総長を交えて「核軍縮のための5カ国首脳会議」を継続的に行い、NPT第6条の履行を具体化させるためのロードマップ(行程表)の作成に着手すべきではないでしょうか。
 こうした保有国の軍縮努力があってこそ、 NPTの枠外にある国々に対しても、核兵器能力の凍結や核軍縮へ向けての誓約を求めることができると、私は訴えたいのです。


原水爆禁止宣言が断罪したもの
 この核軍縮と並行して対応が迫られるのが、NWC(核兵器禁止条約)による「核兵器の非合法化」の枠組みづくりです。
 NWCは、核兵器の開発から、実験、生産、貯蔵、移譲、使用、および使用の威嚇にいたるまでのすべてを禁止するものです。
 そのモデル案は、すでにNGOの主導で起草され、 97年にコスタリカが国連に提出した後、2007年に改訂版が再び国連文書となる中、昨年、国連の潘事務総長も条約の交渉検討を各国に呼びかけました。
 保有国が一向に改めようとしない核抑止政策が、新たに核保有を求める国々の正当化の論拠ともなってきたことを踏まえ、どの国であろうと一切の例外を許さず、核兵器を全面的に禁止する国際規範を打ち立てる必要があります。
 私の師である創価学会戸田城聖第2代会長が逝去の前年(57年9月)に「原水爆禁止宣言」を発表し、"いずこの国であろうと、それを使用したものを絶対に許してはならない"と断罪したのも、核保有の奥底にひそむ国家エゴが、人類の未来にぬぐいがたい脅威をもたらす元凶となることを見据えてのものでありました。
 語句の解説
〈注6〉核使用に関する勧告的意見
 94年12月の国連総会の決議を受けて、 96年7月に国際司法裁判所が示した勧告的意見。「核兵器の使用と威嚇は、国際法や人道に関する諸原則、法規に一般的に反する」と指摘するとともに、 NPT第6条が定める「核軍縮への誠実な交渉」には結果に達する義務も含むとの解釈を示した。
〈2009-1-26〉

 【大白蓮華 2009-04 P108〜P134 抜粋】