日本は優れた被布教国

武器なき“環境”戦争 (角川SSC新書)

武器なき“環境”戦争 (角川SSC新書)

―裏表紙―
 21世紀の世界の覇権争いは「環境」を舞台に繰り広げられる――。
 戦前の軍艦、戦後の核兵器に次ぎ、CO2排出量がいま、人類の最重要課題となった。
 国際政治の主役に躍り出たCO2を外交の“武器”に、「環境」という戦場で、どう戦っていけばいいのか?日本の進むべき道を提示する対論。
 環境から、世界の覇権、メディアリテラシーまで。“世界を識る”気鋭のジャーナリスト二人が、存分に語り尽くす。
―帯―
 CO2で栄える国、滅びる国
 世界の覇権争いに出遅れた"出来の悪い優等生"日本が生き残るための戦略とは?

 第5章「小さな国」からの脱却の中で、次のように語られている部分がある。

手嶋 1980年代には、アメリカでベータ対VHSの戦争が熾烈に行われました。まさしくどちらが「グローバル・スタンダード」をとるか、という戦いでした。『電子立国日本の自叙伝』というテレビ番組の秀作がありました。その番組の関係者に聞いたのですが、日本発の技術システムがなかなか「グローバル・スタンダード」として広がらないのは、日本人が海外で布教活動をした経験に乏しいからだ――と。

     ――<中略>―― 

池上 仏教が極東の島国ニッポンに到達して、見事に花開いたように、セブン・イレブンも特異な進化を遂げたというわけですね。
手嶋 日本という国は、優れた被布教国として、輸入したものを自国の風土に合ったものに土着させてしまいます。その点では、世界に冠たる国ですが、自ら布教するのはどうも不得意、というより、布教の経験そのものをあまり持たなかった。ですから普遍的な価値を世界に押し広げていく経験を欠いている。『電子立国日本の自叙伝』の担当者はそう喝破したのでしょう。
池上 なるほど、優れた洞察です。もっとも創価学会だけは唯一、海外での布教に成功していますよ。
手嶋 「伝える力」の教祖様がそう言うのですから、そうなのでしょう。―<略>―