遊び心

 滑り台を滑り降りるカラスに出くわした。まるで遊んでいるようにしか見えない。以前、知らずに巣へ近づいて背後から低空飛行で威嚇されたことがある。以来、苦手だったが、思わぬ一面に興味をそそられた。
◆調べてみると、上昇気流に乗ってバランスをとったり、電線や枝に逆さまにぶら下がったり、雪の斜面を滑る光景まで目撃されているとのこと。いずれも生きるために必要とは一見思えない行動だ。
◆だが、意外にも動物は遊びによって認知能力を発達させているという。北アメリカに生息するハイイログマは、よく遊ぶ個体ほど長生きする。遊びを通して未知の課題や不確実な状況への対応力を身に付けるかららしい(グレッグ・マキューン著『エッセンシャル思考』高橋璃子訳)
◆人はどうなのか。オランダの文化史家ヨハン・ホイジンガは、人間活動の本質は遊びにあり、遊びは文化より古く、人類が育んだあらゆる文化は全て遊びの中から生まれたと指摘する(『ホモ・ルーデンス』里見元一郎訳)
◆遊びから文化が発展してきたのであれば、遊びは未来の創造にも通じる。「忙しくて遊んでる暇はない」。そんな頭を切り替えて、時にはカラスの遊び心に学ぶのも悪くない。(佳)

 2023.7.31付 公明新聞 北斗七星