サソリとカエル

 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者プリゴジン氏の不可解な死は、プーチン政権による「暗殺」「粛清」「公開処刑」などと、さまざまな臆測を呼んでいる。
◆真相は闇の中だが、政敵や反体制派の不審死や暗殺を疑われる事件が続いてきただけに、政権が関与した可能性は高いとの見方が広がる。強権体制の冷酷で異常な"性格"が露呈したと思わざるを得ない。
◆名優オーソン・ウェルズの監督作品の中で語られる寓話を想起した。こんな話だ。サソリが、湖を渡りたいから背中に乗せてほしいとカエルに頼む。きっと君は刺すとカエルは断る。そんなことをしたら僕も溺れてしまう、安心してくれとサソリが言うので、カエルは承諾する。
◆ところが湖の真ん中でサソリは突然、カエルに毒針を突き立てる。水の底に沈みながらカエルはサソリをなじる。《なんてことするんだ。君も死ぬんだぞ》。するとサソリはこう答える。《でもどうしようもないんだ。これが僕のキャラクターなんだ。》

◆「悲劇だ。しかしほかに選択肢はなかった」。ウクライナ侵略を正当化するロシアの指導者はそう、うそぶいた。「法の支配」ならぬ、「人の支配」とも言うべき政治体制のおぞましさを感じる。(中)

 2023.9.6付 公明新聞 北斗七星より

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