ノルマ

<ノルマ>――ロシア語で労働・生産の一定時間内の最低基準量。もとはラテン語の標準。旧ソ連では個人や工場などそれぞれにノルマが課されていた
◆日本には戦後、シベリア抑留者が引き揚げてきて伝えた言葉だ。森林伐採、鉄道建設……日々の作業に、日本人抑留者たちのノルマは過酷だった
◆シベリアのノルマは想像を絶する。酷寒の地で、栄養も衛生も最低の状況に耐えながらの作業だった。今、ノルマと聞いても、異国の丘を連想する人は少ないだろう。が、知っておいた方がいい
◆今、国民年金の納付率アップについて、各地社会保険事務所のノルマがきついという。そこで編み出したのが〈分母減らし〉の手。被保険者には無断で納付を免除や猶予する
◆分子の納付者を増やすより近道。この手は全国26都府県に広がった。この姑息(こそく)な違法をノルマのせいにする声がある。とんだ見当違いだ。おかげで社保庁改革関連法案の成立も困難の見通しだという
ぬるま湯につかりながら「ノルマが厳しくて……」などと言うなかれ。ノルマの元祖は泣くか笑うか?
 【5月31日付 読売新聞 よみうり寸評】