芸を磨くことは一見、苦しそうに見えるんですけど、私は「苦楽」も表裏一体だと思います。
落語は大がかりな舞台転換があるわけでも、カツラをかぶって化粧するわけでもなく、生身のままで行う芸です。お客さまには自分が持っているものしか、お出しすることはできません。
ですから、芸を磨くには、自分の長所を伸ばすことはもちろん、短所も見つめて、磨いていかなければいけません。
だからよく自分の高座を録音して聴くんですよ。するとまあ、欠点ばかりが目立つ目立つ。でも、それが楽しいんです。"まだのびしろがある"と思えると、欠点があることが不思議とうれしいんですよね。