先人への感謝

 そば粉を使わない「沖縄そば」を「そば」と表示してはならない――沖縄の本土復帰後、公正取引委員会から沖縄生麺協同組合に連絡が入った。そば粉を3割以上使用することが「そば」の表示の条件だからだという。
▼県民に親しまれた「そば」を守るため、地元業者は動いた。粘り強く交渉を重ね、1978年10月17日に「本場沖縄そば」として認可。本土市場への参入で全国に知られるようになり、後にこの日は「沖縄そばの日」と制定された。
▼そばの呼称一つにも影響を及ぼした本土復帰。ドルから円への通貨切り替え、車の右側通行から左側通行への変更など、米国からの施政権返還は県民生活を激変させた。今の日常があるのは先人たちの努力あってこそと、改めて心に刻んだ。
▼米国の歴史学者ハーディング博士は、キング博士の人権闘争の後も”悪がなくならないのはなぜか”との青年の疑問にこう答えた。「キング氏が、すべてを解決してしまっていたら、次の世代は何もすることがないではないか」。そして「先人への感謝を忘れるな」と、
▼より良い世界を築く責任は、今を生きる私たちにある。その第一歩は「先人への感謝」から始まる。歴史から学び、未来への誓いと行動を新たにしたい。

 2022.10.15付 聖教新聞 名字の言より