スポーツ心理学の観点から
大舞台で実力を発揮する6
前回の続きとして、一流選手がよく使う心理的スキルを紹介しましょう。
6.一流選手ほど、自分や人に対する言葉や声がけがプラス方向なのです。これが自分への良い暗示となり、気持ちの切り替えがうまくいき、それが良いプレーや結果につながります。
これを専門用語で「セルフトーク」と言い、「よし!」「まだまだ!」「いける!」などの言葉を考えたり、口に出すことで、気持ちの切り替えやプラス思考で行動をすることができます。一日24時間をポジティブな考えや言葉づかいをすれば、これがトレーニングとなり、スポーツの試合や受験、また仕事での商談など、大切な場面で自然(無意識)にポジティブな考え方やコミュニケーションができるでしょう。
つまり、スポーツでは成功の可能性が高まるということです。みなさんの生活の中で、ここ一番の大舞台で成功するには、セルフトークという心理的スキルを使ってみてはいかがでしょうか。
7.スポーツにおいて、団体競技をするときに、チームワークが重要な要因になります。みなさんは、学校や職場で、大勢の人と協力して勉強や仕事をしていると思います。スポーツでは、うまい人や下手な人がいても、みんなで弱点をカバーしながら、協力して試合で勝とうとします。またどんな職場でも、仕事ができる人やできない人がいても、みんなで協カしてビジネスを成功させようと努力しています。このような人間関係やチームワークは、社会において重要な要因になります。
そこで、メンタルトレーニングでは、このような人間関係をよくしたり、チームワークを高めるためのトレーニング(準備・強化)をします。ここでよく使われるのが、コミュニケーションスキルです。例えば、相手の話をよく聞くという「傾聴のスキル(聞く耳を持つ)」、自分の考えをうまく伝えるスキル、みんなの意見をうまくまとめるリーダーシップなどです。このように、みなさんの人間関係をうまくいかせるためのトレーニングをするという考えはいかがですか。
8.われわれは、受験、仕事、音楽のコンクール、試合など、自分のやってきた努力の成果を試す大舞台に直面することがあります。ここで勝負をしなければならない大舞台で、何をどうすれば成功する可能性が高まるのでしょうか。その答えは簡単です。「準備」をしておけばいいのです。その準備をスポーツのメンタルトレーニングでは、試合に対する心理的準備という表現をします。つまり、あなたの目標に対して、成功するための準備を徹底してやりましょうということなのです。
このようにスポーツの一流選手ほど使用している心理的スキルは、彼らが試合で勝つ(成功する)ために自然(無意識)に、また試行錯誤して見つけたものです。そこで、一流選手やっていることをまねしましょう。一流選手になるコツを学び、成功するパターンを作りましょうということがメンタルトレーニングです。
高妻 容一(東海大学体育学部教授)
【12月20日付 聖教新聞】