ナンバー1か、オンリー1か

「人それぞれが価値あるオンリー1だ」という人もいれば、「競争社会を勝ち抜くためにはナンバー1を目指さなければダメだ」という人もいます。
オンリー1であることと、ナンバー1であることと、どちらが大切なのでしょうか。
人間の世界では、意見がいろいろとあるようですが、生物の世界では答えが出ています。生物の世界の法則では、ナンバー1しか生きられないのです。しかし、不思議なことに、ナンバー1しか生きられないはずの自然界には、多種多様な生き物がいます。
じつは、この世に住む生き物のすべてがナンバー1です。どんなに小さくとも、どんなに細かくとも、すべての生物は、ナンバー1になれる居場所や条件を持っているのです。そして、ナンバー1になれる場所は、その生物にとってのオンリー1なのです。
生き物の数だけ、ナンバー1があります。ナンバー1になるということは、ナンバー1になれる場所を探すことでもあるのです。これは勝負することから逃げているわけではありません。強みを発揮し、絶対に負けない勝負をする場所を見つけることなのです。
人間の世界では、子どもたちは、偏差値というたった一つのものさしで順位をつけられています。大人たちもきめられたものさしで評価されています。しかし、ものさしの数は一本ではありません。本当は、たくさんのものさしがあるはずなのです。
自然界では、たくさんの生き物がナンバー1を分け合っています。こうして、生物の豊かな世界ではできているのです。自然というのは、本当にすごいものです。
静岡大学農学部教授 稲垣栄洋

2016.11.11付 公明新聞 すなどけいより