失敗から学べる人は強い

 「僕は、戦いに敗れることを活力源にして次々に戦いをいどんでいる」とは、映画界の巨匠・黒澤明監督の言葉。栄光と挫折が交差するその生涯は、多くの示唆を与えてくれる。
 敬愛するドストエフスキーの『白痴』を映画化した時のこと。気負い過ぎたのか、作品は不評で、評論家も辛辣だった。順調だった矢先の出来事に落胆は大きかったという。
 だが監督は転んでもただでは起きなかった。自分では気付かない視点を取り入れようと、周囲の声に真摯に耳を傾けた。自ら書き進めたシナリオも、批判があれば何度もやり直した。こうして完成したのが名作「生きる」であり「七人の侍」である。彼が人生を懸けて追求したのは「人間の幸福」だった。(都築政昭著『黒澤明の映画入門』ポプラ新書)
 失敗から学べる人は強い。その経験を教訓として生かせるからだ。それはやがて、失敗を恐れない境涯を開き、人々を励ます力にもなる。学会員の信仰体験が共感を呼ぶのも、失敗や挫折、幾多の苦難にも負けず、それらを活力源に変えた「心の強さ」に感動するからだろう。
 失敗は誰人にもあり、それ自体が幸・不幸を決めるのではない。試練に心を折られるのか、勝利と幸福への出発点とできるのか。その鍵は、わが一念にある。(仁)

 2017.9.6付 聖教新聞 名字の言より

 人の地に依りて倒れたる者の返つて地をおさへて起が如し

 御書P552 「法華初心成仏抄」