「時は流れない。それは積み重なる」とは、コマーシャルの有名な言葉だ。時間の「粒」の積み重なり。それは、上から砂がどんどん運ばれ、下に山ができる砂時計に似ているかもしれない。
▼２５億秒――「人生８０年」とした場合の秒数である。ふだん私たちは、１秒１秒の時間の粒を意識せずに暮らしている。ところが、文豪ドストエフスキーは若き日、人生の残り時間「５分」という事態に直面した。
▼革命運動で逮捕され、銃殺刑に。「５分後に自分は、この世にいない」と思った時、その５分が「莫大な富」に思えた。彼は決める。２分を瞑想に、もう２分を友との別れに……もしも助かったら、一瞬一瞬をまるで百年のように大事にして、むだにすまい、と
▼「極楽での百年間の修行は、現実社会での一日の修行の功徳に及ばない」との御金言を拝して、池田名誉会長は論じている。大変な場所で一日でも奮闘すれば、「百年の歳月にも匹敵する、“生命の時間”が刻まれる」と。物理的な時間があるかないかではない。一瞬一瞬を真剣に生き、充実した“生命の時間”を積み重ねるところに、幸福はある。
▼２５億秒の時間を、どう生きようとしているのか――きょう、「時の記念日」を機に自身を見つめたい。（継）
