壁を破った青年の潮流

破邪顕正
 「衆心城を成し、衆口金をとかす」(中国の史書『国語』)
 民衆の心が結束すれば、その意志は鉄壁の城のようになり、その口は金属も溶かすほどの熱をもつという意味だ。
 社会システムが複雑化し、個々の人間が疎外感を抱きやすい現代だが、 この精神の閉塞を打ち破る力となるのが、にぎやかな庶民の"声"である。
 第2次世界大戦直後のヨー口ッパは、ナチスの蛮行の傷跡も深く、完全に分断されていた。とくに仏独両国の間には、嫌悪と不信が渦巻き、最も深刻な断絶があった。
 これを一掃し、欧州統合へと時代の歯車を動かしたのが、青年たちの対話の力である。
 この42年間で、両国間を往来した青少年は、実に700万人以上。この個人の友情を基盤に、2000を超える「都市交流」、3000を超える「学校交流」が結ばれ、今日に至る平和の潮流に発展したのだ。
 一方、現代の日本は「自分の力だけではどうしようもないという無力感に苛まれる青少年は9割」「まじめに努力しても報われないと感じる青少年が7割近く」(東京都調査)という。
 青年を市場としか見ないメディアや政治屋らが、どれほど若い命を蝕んできたことか。
 ロマン・ロランいわく「今日の人たち、青年たちよ、きみたちの番だ。われわれの体をふみ台として前進して行きたまえ、われわれよりも偉大に幸福になりたまえ」(山口三夫訳)
 世の指導層に、この心がないことが日本の一凶である。
 全生命を注いで青年を励ます池田名誉会長---そのもとで進む青年たちの随喜幾百万の若き大潮流が今、無気力日本の壁を押し破った  (掛水伸吾)【7月5日付け 聖教新聞