新・人間革命 師恩11

 この日もまた、山本伸ーは、一人ひとりの仕事の様子や家庭の状況などを詳細に尋ねていった。
 子どもがいると聞けば、お小遣いやお土産を渡し家庭教育についてアドバイスした。
 また、結婚が決まったという人には、結婚生活について助言した。
 そうした語らいのなかで、信心については、どこまでも謙虚に、求道心を燃やし続けていくことが大事であると訴えた。
 「幹部になり、慣れてくると、学会のことも、仏法のこともわかったような気になって、"こんなものか"と思い込んでしまう場合がある。
 しかし、それは求道心が乏しく、慢心になってしまったということなんです。
 たとえば、朝顔の花を見ても、"なぜ、こういう花の色になるのか""原産地はどこなのか"など、淵源にまで遡って探究しようとする人がいる。
 その人は、朝顔から生命の不可思議さをも知り、自分は、まだまだ何もわかっていないのだと感じるはずです。いくらでも学ぶことがある。
 しかし、朝顔を一つ見て"これが朝顔か。もうわかった"と思う人もいる。それは、人間としてまだ浅いんです。
 同様に、妙法蓮華経というのは、宇宙の根本法則であり、最も難信難解の法門なんです。それをわかったつもりになるというのは、『未だ得ざるを為れ得たり』と思う、増上慢の姿です」
 また、伸一は、勤行の大切さをあらゆる角度から語っていった。
 「職場や学会の組織のなかにあっても、人間関係をはじめ、さまざまな間題で悩むことがあるでしょう。
 しかし、どんな険路でも、エンジンが強力で快調であれば、車は前進することができる。
 このエンジンに該当する、何ものにも負けない挑戦と創造の原動力が勤行なんです。勤行し、しっかりお題目を唱えている人は、最強のエンジンがフル回転しているようなものです。
 人生には必ず悩みはある。大変だな、辛いなと思うことも、題目を唱え抜いていくならば、むしろ、成長のための養分とし、自身の跳躍台にすることができる。
 いやな上司や先輩だって、すべて善知識に変えていけるのが信心です」
 皆の顔が輝いた。