嘘をつく新聞

街場のメディア論 (光文社新書)

街場のメディア論 (光文社新書)

世界について嘘をつく新聞
 何年か前に、バラエティ番組で虚報事件がありました。「納豆ダイエット」をバラエティ番組が放送した後、人々がスーパーに納豆を買いに走ったせいで、店頭から納豆が消えてしまった。そのダイエット効果の報道そのものが信頼性のないものだったのですけれど、それ以上に問題になったのは放送前に、納豆業界に対してテレビ局からファックスが送られて「今度の放送の後、納豆が大量に売れますから、増産しておくように」という指示があったことです。
 そのときに新聞は一斉にテレビの「やらせ問題」を叩きました。でも、僕はそのときにこれはおかしいんじゃないかと思った。どこの新聞の社説にも、「こんなインチキな番組を作って視聴者を騙す、なんて信じられない」というようなことが書いてあったからです。
 「それは嘘だろう」と僕は思いました。テレビが「そういうこと」をしているのを新聞記者なら知っていて当然だからです。
 テレビはまじめに番組作りをしており、「そんなこと」をするはずがないと記者たちがほんとうに思っていたとしたら、それはあまりにナイーブすぎる。とてもそんなイノセントな人間には新聞記者は務まりません。プロの記者であれば、テレビ局がどんなふうに番組を作っているか、その現場のモラルがどれほど荒廃しているか、テレビ局は制作費を「中抜き」するだけで、実質的な制作を下請けプロダクションに「丸投げ」しており、それゆえ番組内容を十分にコントロールできていないという、今の制作体制について熟知しているはずです。知らないはずがない。
 それを知っていたなら、「いずれこういうことが起きる」という警告をあらかじめ発しておくべきだったでしょう。テレビ界の反省をきびしく促しておくべきだったでしょう。しかし、実状を知っていながら、刑事事件になるまで、新聞は「知らないふり」をしていた。それで新聞はメディアの責任を果たしていたと言えるのか。(本文より)

 GWに読もうと購入しましたが、一気に半分ほど読んでしまいました。
 もう、一冊買わなくてはGWがもたなくなってしまいました。(ToT)
 面白いので、明日も続きをUPしようと考えております。