くじ引きの順番は

 学校の数学では、くじ引きは、くじを先に引いてもあとで引いても当たる確率は同じだと教わる。
 シンプルな例で考えてみよう。10本のくじを考える。棒の先を赤くしたり、紙の上にアタリと書いてまるめたりと、10本中1本を当たりにする。
そして10人が順番にくじを引く。
 先生の説明はこうだ。10本中1本が当たり。そこで一番の人は、10分の1の確率で当たる。だが、10分の9の確率ではずれる。
 二番の人は、一番がはずれくじを引いたときだけ、くじが引ける。
その時点で残っているくじは9本で、その中の1本が当たりだ。二番の人が当たる確率は、くじを引ける確率が10分の9で、引いて当たる確率が9分の1。この二つをかけ算して、当たる確率は10分の1。くじを引けるならば、当たる確率はあとの順番の人ほど高い。残り福というやつだ。
 しかしくじを引ける確率自体が、あとほど減少する。
この増減分をかけあわせて、どの順番でも10分の1になるのだ。
 「ほら、慌てないで。ちゃんと並んで みんな10分の1よ。順番は関係ないの」。我先にと並ぼうとする子どもたちに先生が注意する。
 でも、本当だろうか?順番があとなら、くじを引けなくなるリスクが高いのだ。いくら数学的には同じだといわれても、くじを引くワクワク感を総合すると、断然早い順番のほうがいい。
 このしくみはどこか、スーパーでの買いだめと似ている。いくら平均的にモノがあるといわれても、そのモノがなくなってしまえば元も子もない。少しでも先に買ってしまおうと思うわけだ。
 社会現象では、数字の上では大丈夫だと説明されても、人間の心理という大きな要素が働く。
 やっぱりくじ引きは、先に引いたほうが得だと思う。

  武庫川女子大学教授 丸山 健夫

  2020.4.24付 公明新聞 「すなどけい」より

 コロナでステイホーム、久々の更新です。 (^ω^;)