中国女性初のノーベル賞

屠呦呦ー中国初の女性ノーベル賞受賞科学者

屠呦呦ー中国初の女性ノーベル賞受賞科学者

 

 世界中が新型コロナウイルスと闘っいる現在、弊社が刊行した1冊の本が脚光を浴びている。それは『屠呦呦 中国初の女性ノーベル賞受賞科学者』だ。
 漢字名「屠呦呦」を目にした日本人は、ピンと来ない方も多いだろう。世界で多くの命を救った抗マラリア薬開発の功績によって、2Ol5年、中国女性で初めてノーベル賞(生理学・医学賞)を受貢した科学者・屠呦呦氏のことである。中国の伝統医療に着想を得て、アルテミシニン(青蒿素)とジヒドロアルテミシニンを発見し、歴史にその名を残した。
 屠呦呦氏は1930年に漸江省寧波に生まれ、「呦呦と鹿鳴き 野の蒿を食む」という中国最古の詩集『詩経』の一節から名付けられた。それから40年後、薬学者となった彼女がマラリア薬開発において、まさにこの詩に詠われる「蒿」(ヨモギ)という植物の研究に専念した結果、抗マラリア薬を発見したのは不思議な運命と言わざるを得ない。
 69年、文化大革命期、世界で猛威を振るっていたマラリアに対する特効薬開発を目標とした「525計画」研究チームのリーダーに任命された屠呦呦氏は、2000にも及ぶ伝統的な漢方の調剤法を調査し、l600年前の文献『肘後備急方』に記されていた青蒿(クソニンジン)についての記載に着目した。試行錯誤を重ね、安全性の低い研究環境にもかかわらず、健康への危険性を顧みず自らの身体で治験を行い、全身全霊で研究に打ち込んだ。そしてついに青蒿の抽出物からアルテミシニンを発見したのだった。
 アルテミシニン発見は世界中の国々において多くの命を救い、世界のマラリア発病率・死亡率は50%以上も低下した。この功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞。同賞の歴史において12番目の女性受賞者であり、中国人女性としては初のノーベル賞受賞者であった。
 大学院に進まず、海外留学経験や中国科学院等にも属していなかった屠呦呦氏が、このような功績を残せたのは、彼女が生涯をかけて研究一筋に打ち込んだそのひたむきさと、深い愛国心ゆえといえよう。彼女は90歳近くになつた今もなお、科学院主席研究員として研究の日々を送っている。
 屠呦呦氏が歩んできた研究者としての軌跡をまとめた書籍『屠呦呦伝』が15年、中国の人民出版社より刊行された。日本でも前述の邦訳版が刊行され、彼女と同年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本の大村智氏が推薦文を寄せている。
 現在、全世界が新型コロナウイルス蔓延という新たな危機に脅かされ、世界には暗いムードが漂っている。だが人類の英知と努力がこのような大きな困難に打ち勝つてきたことを、歴史は物語っている。本書は歴史的偉業の記録の1つとして、読者を励まし、勇気づけてくれることだろう。
 日本僑報社編集長 段 躍中(だん やくちゅう)

   2020.5.29付 公明新聞より

 記事を読み始めて何時の話なのだろうと思った。5年前、大村先生と同じ時にノーベル賞を受賞されていたとはビックリ、恥ずかしながらまったく認識していませんでした。 (^^;)