第34回「SGIの日」記念提言 13-7

◇「人道的競争へ 新たな潮流」-VOl.7

グローバルな危機を時代変革の糧に  「平和と共生の世紀」を建設

 続いて、この「人道的競争」の理念に基づき、地球的問題群に取り組むための方途について具体的に提案しておきたい。
 世界は今、先に論じた経済危機に加え、地球温暖化やエネルギー問題、また食糧問題や貧困問題が連鎖しながら悪化していく危機に見舞われています。歴史のプリズムを通して見ると、今日の状況は、1929年の世界恐慌の再来をも想起させる衝撃と、70年代前半にドルショック〈注4〉や石油危機が起こり、さまざまな地球的問題群が次々と顕在化した状況が、一挙に襲いかかっているような様相さえ呈しております。
 振り返れば、30年代には世界恐慌による経済危機を乗り越えようと、関税引き下げや為替レートの安定についての政策協調が模索されました。しかし、いずれも不調に終わり、他国に配慮せず自国の権益のみを守ろうとする経済政策がさらに危機を深刻化させる、いわゆる"囚人のジレンマ"の状態を招き、世界恐慌の反省が実を結ぶには、第2次世界大戦の惨劇を経ねばなりませんでした。
 一方、70年代前半には、環境問題や食糧問題に関する国連開催の世界会議が初めて行われ、先進国によるサミット(首脳会議)もスタートしました。これらの動きは、現在にいたる国際協調の端緒となったものの、当時の諸問題が抜本的な解決を見ないまま山積しているように、国益の対立の前に十分に権能してこなかった面は否めません。
 その意味で、今、我々に求められているのは、かつての危機の時代における取り組みをはるかに凌駕する「大胆な構想」と「大胆な挑戦」でありましょう。
 金融危機震源地となったアメリカでは、"チェンジ(変革)"を合言葉に掲げたバラク・オバマ氏が大統領に就任しました。オバマ大統領は就任演説で、「世界は変わった。故に、我々も共に変わらなければならない」「いま我々に求められているのは、新しい責任の時代に入ることだ」(「読売新聞」1月22日付朝刊)と呼びかけましたが、その変革への挑戦はアメリカ一国のみならず、世界全体で等しく必要とされるものです。
 そこで私は、現在のグローバルな危機を、「人道的競争」の具現化を通して、人類の新しい未来への"糧"に変えながら、「平和と共生の世紀」を建設するための柱として、次の三つの項目を挙げたい。
 第一は環境問題への取り組みを通しての「行動の共有」であり、第二は地球公共財に関する国際協力を通しての「責任の共有」であり、第三は核兵器廃絶への挑戦を通しての「平和の共有」であります。
 語句の解説
〈注4〉ドルショック
 1971年8月、アメリカのニクソン大統領がドルの全兌換の停止を宣言したこと。ベトナム戦争による財政悪化の解決策として、輸入課徴金の実施などを内容とするドル防衛を図った結果、世界経済に衝撃的な影響を与えた。その後、為替相場は「変動相場制」に移行することになった。
〈2009-1-26〉

 【大白蓮華 2009-04 P108〜P134 抜粋】